ハンコの素材にはいろいろなものがあります。 伝統的なものとして本つげ、アカネ・牛角白(うしつのしろ)、黒水牛、象牙などの印材がありますがこれらは比較的古くからハンコの材料(印材)として用いられている素材です。 近年になって新素材と呼ばれるチタンやアグニ、オノオレカンバ、琥珀樹脂、シープホー ンなどの印材も多数開発されるようになりました。(優牙「ゆうが」というネームミングの人口象牙や樹脂素材でできた水牛似の印材まで登場してきましたがここでは伝統的な印材の説明と解説をします) それでは次にそれぞれの印材の特徴(長所と短所)を具体的に見ていきましょう。

本つげ・アカネ |
木の素材の印材です。漢字で柘植や黄楊、柘とも表されますがハンコ用としては柘(木へんに石)の表記がピッタリします。(ここではもっと分りやすくひらがな交じりで「本つげ」と表します) 本つげは木材の中ではもっとも緻密な繊維を持っていてしかも硬いので印材として適しています。かつては国産のつげ材を本つげ、輸入つげをシャムつげといっていましたが国産品を(薩摩)本つげ、輸入つげは正式名のアカネといって区別しています。アカネはつげに大変よく似た植物ですが原産国が東南アジアであるため四季のある中で育った本つげと違い年輪が大きい為、やや緻密さに欠けます。 石のように硬いとはいっても経年変化や朱肉が染み込んだりすると意外と脆く、ポロッと欠けたりしますので使用後は印面をきれいに拭いて清潔に保つことが肝心です。 |
牛角白・色(うしつのしろ・いろ) |
旧名をオランダ水牛といい陸牛の角を加工した印材。あめ色の独特な風合いを持つ印材です。ややグレーがかった物や模様のあるものもあります。色の抜けがよく色に近い色のもの、芯もち物がより高級です。以前は輸入品であるという意味合いから「オランダ水牛」というネーミングでしたが表示法の改正などで現在の牛角色(うしつのいろ)や牛角白(うしつのしろ)という名前になりました。 パチンと閉まる金具式のケースに入れておかないと印面を虫に喰われてしまいます。また高温多湿な場所にそのままで置かれていると印材自体が反ったり曲がったりするので、やはり金具式のケースに入れて保管することが重要です。 |
黒水牛(くろすいぎゅう)最近は牛角(黒)とも言います。 |
黒水牛大陸の水辺に住む牛科動物の角を加工したもの。黒くつややかで耐久性のある優れた印材です。良質なものは「芯持ち」と呼ばれ小さい芯を持ちます。1 本の角から1つしか取れないという希少なものも散在します。大抵のものは黒く染色加工がなされていますが「染めなし」と呼ばれるナチュラルブラックが持ち 味の印材も存在します。 牛角印材と同様に金具式のケースにいれておかないと虫に喰われたり反ったり曲がったりします。 |
象牙 |
象牙印材(アイボリー)とは文字通り象の牙を材料とした印材です。象牙は耐久性に優れており耐磨耗性も抜群です。ワシントン条約で国際取引禁止となり 1989年に輸入禁止となりましたが現在、日本国内で合法的に流通している象牙は禁止以前の在庫ないし禁止以後も一時的に量制限されながらも解禁されたもので す。 印材に限らず象牙製品を販売するのには「種の保存法」による特別種事業者届に係わる事業番号が必要です。また正規ルートの象牙印材(製品)には政府発行の象牙シールがつきます。(個別番号付です) 「主の保存法」に基づいて手続きしている正規販売店は、特別種事業者番号を必ず提示していますし象牙製品の販売に際して一つ一つに象牙シールをつけていますのでと違法販売店との見分けがつくと思います。 殆どの象牙印材は象牙に対して縦に採られますが(縦目)横目(よこめ)と呼ばれる印材は横に採るのでひとつの象牙から一本採れるかどうかというものなのでとても希少なものとして取り扱われます。横目印材はその模様から日輪(にちりん)とも呼ばれています。 (2015年12月2日。イラスト画像を更新しました) 落として欠けたりしなければ100年以上は保てるのでこれといった欠点の無い象牙印材です。ですが火災などで焼失する場合もありますし水濡れ後の急激な乾燥で印材に狂いが生じることもあります。また他の印材と同様に朱肉が染み込んでこないように使用後は印面をよく拭いておいて下さい。 |